知ることで、人生の選択肢は増える
行ったことのない街の名前を、誰かから聞いたとします。
「小さな本屋が多くて、歩くのが楽しい街なんですよ」
それまで気に留めていなかった場所なのに、少し調べてみたくなる。
写真を見て、いつか行くかもしれない旅先の一つになる。
不思議ですよね。街は前からそこにあったのに、知ったことで初めて、自分の選択肢に入ってくるのです。
人生の学校、2時間目。
「教養」のお話をします。
「教養」と聞くと、歴史上の人物をたくさん知っていることや、難しい本を読めることを思い浮かべるかもしれません。私も以前は、知っていることが多い人ほど賢いのだと思っていました。分からない話に出会うと、質問するのが少し恥ずかしかったんです。
でも、今は少し違う見方をしています。
知識は、知っていること。その知識を手がかりに「ほかの見方もあるだろうか」と考えられることが、教養の面白さなのではないでしょうか。
たとえば、友人が今とは違う働き方を選んだとします。「自分には無理だ」と思うかもしれません。でも、その人がなぜその選択をしたのか、どんな暮らしを大切にしているのかを聞くと、自分が当たり前だと思っていたことにも気づけます。
友人と同じ道を選ぶ必要はありません。ただ、「そういう考え方もある」と知っているだけで、いつか自分の選択に迷ったとき、考える材料が一つ増えます。
もちろん、知れば必ず正しい答えが見つかるわけではありません。知れば知るほど、かえって迷うこともあります。それでも、何も知らないまま「これしかない」と決めてしまうより、自分で納得できる道を探しやすくなる気がします。
大人になってから学ぶことには、学生の頃とは違う楽しさがあります。仕事をして、人と出会い、暮らしてきた今だからこそ、本の一行が自分の経験とつながることがある。昔は読み飛ばした言葉に、立ち止まることもあります。
勉強を始めるのに、立派な目標はいりません。
映画に出てきた知らない土地の名前。ニュースで聞いた、意味の分からない言葉。誰かの話を聞いて、少し引っかかった考え方。「なぜだろう」と思った、その小さな引っかかりが入口になります。
私は本屋で気になる言葉を見つけると、つい別の棚まで歩いてしまいます。調べたかったこととは違う本を手に取って、帰る頃には新しい疑問が増えている。そんな日も、悪くないと思っています。
今日の宿題🖊️
最近気になったことを一つだけ選ぶこと。
そのことについて、今「知っていること」は何でしょう。
「知らないこと」は何でしょう。
そして「もう少し知りたいこと」は何でしょう。
三つを短くメモして、最後の一つだけ調べてみてください。
すぐに答えが出なくても大丈夫です。
あなたが次に知りたいことは、何ですか。
答えを出す必要はありません。
少し気になったまま、今日を終えてみてください。
人生の学校|教養担当 しおり先生